全力疾走、ときどき爆睡。

報道記者/NPO法人maggie's tokyo共同代表・鈴木美穂のブログ。あれもこれも追いかけて、きょうも猪突猛進進進!!

左胸の異変に、考えたこと。

突然左胸に異変を感じたのは、先月29日(火)のことでした。

仕事から帰宅して、目黒川沿いをジョギングしていたときに左胸に感じた、いつもとは違う重みと痛み。
嫌な予感がして、帰宅して恐る恐る触ってみたら、しこりと思えるようなものに触れて、意識が遠のいていきそうになるのを必死でこらえました。
 
2008年、24歳のときに右胸の乳がんの治療をしてから8年半。
乳がんから「卒業」といえるようになるまであと1年半というところで、もしかして今度は左胸に・・・?
 
きっとそうだ・・・
なんだか右胸にしこりを見つけたときと似ているような気がする。
あのときも、前日までは何の予兆も感じず、突然だった。
 
・・・いやいや、気のせい!心配しすぎ!
きっとただ生理とかホルモンバランスの関係で胸が張っているだけだ!
 
ぐるぐると色々なことが頭を巡るけれど、どんなにしこりと思えるような部分を触って考えてみても残念ながら私がこたえを出せるたぐいのものじゃない。
でも、悪いものだったら、知るのが怖くて、知りたくない。
でも、もし悪いものだったら知らないまま放置しているほうが、もっと怖い。
 
ぐるぐるぐるぐるしながら、手帳を見たら、10日後の12月9日(金)なら誰にも言わずに仕事を休むこともなく2時間くらい病院に行く時間がとれそう。
よし、もしそれまでに解消していなかったら、検査に行こう。
 
そう決めてからの10日間は、すごくすごく長かったです。
 
明日起きたら異変は消えてなくなっていますように。
そう祈るような気持ちで眠りについて、毎日朝起きては左胸を触り、異変が変わっていないことにがっかりしながら出勤していました。
それどころか、数日すると、しこりも痛みも強くなっていて、扁桃腺も腫れだした。
そして、何らか関係があるのか、ストレスからか、口内炎とものもらいまで出てきた。
いろんなデキモノを気にしながら、背筋が寒くなって仕方がない。
 
なんだか、2016年、いいことが起きすぎて幸せすぎて、大どんでん返しがあるんじゃないかと怖かったんです。
その予感は、これなのか・・・
検査に行く前日には、もう、悪い結果が出る気しかしていませんでした。
 
きっと明日、告知をされて、また闘病が始まることになる—。
そう思ったときに、頭の中をたくさんの考えが巡りました。
 
まず、マギーズ東京をオープンできていて良かったということ。

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きっと通うことになるだろうし、あそこにあると思うだけでちょっと落ち着き、安心する。
マギーズは、自分の闘病中と同じように戸惑い、苦しんでいる人たちのために・・・と言ってやってきたけど、自分のもしものときに備えるためでもあったのかもしれない、と気付きました。
そして、がんについて、私は自分のことになるとまだまだ怖くて乗り越えきれていないんだな、と痛感。
こんなに医療は進歩して、効く薬も日進月歩で開発されて、どんな状況でも、希望はあると思っているのに・・・
その一方で、こんなにも仲間がいる中で8年半前の取り乱した自分とは全く違う自分で向き合っていくことはできそうだな、とも思いました。
 
そして、その後出てきたのは、後悔の念。
 
もっと親孝行しておけばよかった。
結婚して(もらって)みておきたかった。
世界をもっと旅して目に焼き付けておくんだった。
やろうと意気込んでいたことを早く進めておくべきだった。
調べることさえ怠っていた保険に入っておけば良かった。
いっそ、がんと診断されたらチャラになるローンなどを組んでお家を買っておけば良かった。笑
 
もしも・・・のときって、心の深層で考えていることが湧き出てくるから、不思議です。
そして、ぱっと浮かんだ内容は玉石混合ですが、すべて、やって後悔したことではなく、やっていなくて後悔したことばかり。
 
でも、もっとあの治療をしておけばよかったとか、こんなに忙しくしなければ良かったとか、体を酷使しなければよかった、という思いが一切起こらなかったのが、意外でした。
毎日精一杯全力で生きて、全力で爆睡して、私なりに体に気を使って食事に気をつけたり運動したりもするようになって、そのときそのときの最善を選択してきたつもりだから、もしそれでまた改めて闘病をしなくてはならない結果になったらそれはそれで運命だと受け入れよう、と。
 
この世界が大好きで、まだまだここにいたくて、まだまだまだまだやるべきこともやりたいこともありすぎて、死にたくない。
でも、8年半前に死をとても身近に感じるようになってからは、今この瞬間もなかったかもしれない人生を生きていて、どんなに病気になりたくない、死にたくないと祈って願って懇願しても、そうなるときはそうなるし、人は必ず死ぬということも、いつもどこかで覚悟しながら、毎日を生きてきたつもりだから。
 
それでもやっぱり怖くなって、検査の前日の夜、妹分でありながら、がんの受け止め方については上級エキスパートと思って勝手に崇めている山下弘子ちゃんにこっそり電話をして、不安な気持ちをぶちまけてアドバイスをもらって泣いて、気持ちを落ち着かせて、まさに「人事を尽くして天命を待つ」というような祈るような気持ちで眠りにつきました。
 
そして、おととい9日(金)。
 
この日は、本業の仕事は夕方出勤深夜まで勤務の遅番で、午前中は、マギーズ東京のお隣にオープンしたランニングステーションのオープニングセレモニーに出席。
 
晴れの場で、2020に向けて・・・という言葉を聞く度に、2020に向けて協同していきましょう・・・なんて言葉を自らも発しながら、実は、私は2020まで生きていられないかもしれない、と弱気になって心が泣きそうになっていたりもしました。
 
そして、このセレモニー後、お隣のマギーズ東京に寄ってこの日ボランティアで常駐している(何も知らない)母に会って深呼吸して心を落ち着かせ、午後1時からは、来年から始まる新しい仕事のための研修へ。
実は、最近人事異動の発表があり、1月からキャスターを兼務することになり、そのための発声や原稿の読み方の研修でした。
 
入社以来10年間、記者とディレクターしかしたことがなく、キャスターの「キ」の字を自分から希望したことも打診されたことも一度もない中での突然の内示だったので、自分でも耳を疑うサプライズ人事。
先月初めてその話を聞いた時は腰を抜かしそうになって、個人的には今そのタイミングじゃないかも?!失言して社会的に抹消されたらどうしよう・・・なんて怖く思ったこともあったけれど、最近は中継をする度に同じ病の人たちなどから「励みになります」「応援しています」などと連絡をいただくようになって私自身の励みになっていたし、なんだかこれまでの仕事だけでなく、健康面でも合格!と認めてもらえたような気がして嬉しくて、今月になって研修を受けさせてもらったり、スタイリストさんと顔合わせをしたりしているうちに、やる気になってきていました。
それに、どんなに失敗してしまっても、生きている限り、挽回できるじゃない!と。
 
でも、もし、今日病気が分かったら、1月からこの仕事はきっとできなくなる。
治療は働きながらするつもりだけど、治療方針が決まって始まってみないとなにも分からないし、きっとまず抗がん剤で髪の毛が抜けることになるだろうし、治療中の体力を考えると月から金まで通しでできると責任と自信を持ってはいえない。
でも、始めてすぐにおりなくてはならなくなったら、一番迷惑がかかるし、変に憶測を呼んだり、不安を煽ってしまいそうでもある。
ということは、検査の結果次第では、新しい仕事を始める前に、可能な限り早くできない可能性を言わないといけなくて、そうなるとせっかくの新しい仕事も、そのための研修も準備も、意味がなくなってしまう・・・
 
そんな風に思って、また少し泣きそうになるのをこらえながら研修を受けていました。
 
そして、午後3時に研修が終わっても、相変わらず胸は痛くて張っていて、しこりに触れるような感覚にも変わりがなかったので、意を決して、遅番の出勤までの間の時間に、いつもの主治医の先生のいる病院に行ったのでした。
 
もしものことがあったら、今の色々が少しでも中断されてしまうのは、本当に本当に悔しい。
でも、もし、もしものことがあっても、どんな結果だとしても、今の生活は最大限続けながら、落ち着いてひとつひとつ淡々と、最善を尽くしていこう。
現実は変えられないから、対応していくしかない。
その中でできなくなることがあっても、失うことがあっても、何よりも命を最優先して決めるという軸だけはぶれないようにしよう。
また、自分できちんと消化できるまでは心配をかけるだけなので親や会社には言わず(8年半前、がんを告知されたその場で号泣しながら母や上司に電話したときから考えると、少しはオトナになったかもしれません・・・)、とりあえず検査後、午後6時からの遅番勤務にはいつも通り出勤しよう。
 
「鈴木さん、どうぞー!」
 
そう心に決めて、涙が出そうになるのを深呼吸でかき消して、診察室に入っていきました。
 
《後半に続く》
 
 
今回感じたことをきちんと残しておこうと思い、マギーズ東京がオープンした日から一度も更新できていなかったブログに書き出してみたら長くなってしまいました。
今はこの金曜日の遅番明けでマギーズ関連の行事と会議に出てからの土日泊まり勤務明けのままマギーズ関連の行事と結婚式、披露宴に出た後という状態で、急に今にも寝てしまいそうなくらい眠くなってきたので、前半で切って、今夜は早めに爆睡することにします。